アンジェとベアトリスがメインの小説本です。
宵の帳も降りたであろう時、アンジェはメモが差し込まれていることに気が付きます。差出人はベアトリス。なぜ自分なのかと自問するアンジェはすぐさまひとつの答えにたどりつきます。ベアトリスが求めたのは声なき救いでした。彼女の特別な喉を治すためにアンジェは限られた人だけが視ることを許される深淵を覗き見ることになります。覗き返してくるのは彼女の言葉を作り替えた主。しかしアンジェは意に介しません。
大切な仲間を救うためにほんの些細なミスが文字通り命取りとなる治療をアンジェはなんとか終え、帰路につこうとします。「ここで寝て行けばいいんじゃないですか」ベアトリスのそんな素敵な提案を残念ながらアンジェは受け入れられません。それでもアンジェは優しい声でベアトリスにささやきます。「お休みなさい、ベアト。いい夢を」
これはあくまでも想像にすぎませんが、アンジェはきっとベアトリスのそこにある無機質なパーツ越しに彼女のあたたかな献身を感じ取ったにちがいありません。それは丁寧かつ緻密に描写されているベアトリスの行動から読み取ることができます。
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