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※タイトルのthresholdは"境界"、"しきい値"の意味 |
西條クロディーヌと天堂真矢、それぞれの視点から描写される小説本で、分量的には真矢にフォーカスされていると感じました。表紙は里様。
- 入口
そんなクロディーヌが”彼女”を本当の意味で知ったのは、入学してすぐのレッスンです。その圧倒的な存在感、目を閉じたくてもまばたきすらできないほどの輝き。天堂真矢という存在はそれほどまでに大きく、どんな時でも意識せざるを得ない状態にされてしまったほどです。
天堂真矢という輝きとの出会いは幸不幸で言えば不幸かもしれません。しかし、だからといってクロディーヌの熱情は消えるどころかますます燃えさかります。だからこそ言えたのです。「アンタを越えてみせる」と。
- 識閾―前
- 敷居
- 識閾―後
小学校、中学校――。真矢は順調にキャリアを積み重ねていきます。しかし、そんな彼女の胸中にはわだかまりがひとつ。とある理由が影響しているのではないのか、という懸念をぬぐえずにいました。
そんな思いを抱いたまま、真矢は聖翔音楽学園に入学します。そこで初めて真矢は知ることができたのです。まっすぐに自分を見据える視線。純然たる敵愾。今まで向けられることのなかったそれを好敵手と表現するのだと。そして自覚します。自分の中にも、譲れないものがあることを――。
クロディーヌと真矢。双方がそれぞれに抱く感情が軽快に描写されている一方、もう少しボリュームが欲しいと思えた作品となっています。また、露崎まひるのさりげない活躍も見逃すことのできないポイントのひとつです。