死にたがりやの戯言・1の1

2013年1月28日月曜日

オリジナル

t f B! P L

最近pixivに投稿をはじめたおそらくはミステリーとか推理とか、そういうものにジャンル分けされるのではないでしょうかと思うような作品です。気持ち悪い文章ですが、仕様です。



 この世にはたくさんのものがある。形のあるもの、形のないもの、そして形を変えるもの。残念ながら大抵は手に入らない。いくら見続けたとしても、それが目の前に現れる可能性は限りなくゼロに近い。
 これを簡単に例えるなら才能なんてものがわかりやすいだろう。たとえば絵の才能。少なくとも僕はピカソにもレンブラントにも、もちろんオディロン・ルドンにもなれるはずがないし、彼らの描いた絵の1%すらも人々の心に残る何かを作り上げることはできやしないだろう。このたとえがわかりづらければ、あなたの知っているスポーツ選手にあなたが今からどうすれば成り変われるかを考えればいい。
 僕は才能を持たない側の人間なので持っていて生じる問題なんてものは知らないし、それはとてつもなく贅沢な――それこそイチゴジャムを塗りたくったパンをハチミツに浸してしまうくらい――問題だと考えると思う。誕生日に腕時計をもらったんだけど、もうすでに10本もあるんだよねーと片耳で聞くと、おそらく心の中にあまりよろしくない感情が芽生えるようなものだ。
 長々と言ってきたことを簡単に言いかえれば、僕らのような才能のカケラすらないような『普通』な人間は、自分が凡人だと理解し夢を見るなんておこがましい……となる。
 もちろん努力したいのならすればいいし、夢のために人生を費やすのは個人の自由で僕が何かいうつもりはない。ただ、できなかったからといってそれを他の誰かにやつあたりのように言い放つのは勘弁してもらいたい。自分の進む道が絶壁だとわかっていたのに進んだのが悪いのだから。人間は可能性に魅力を感じ、そして可能性の壁に敗れ去るものだと昔聞いたことがある。
 だから僕は努力なんてしない。適当に生きて、適当に死んでいく。おひとりさまだろうが無縁仏だろうが一向に構わない。少し前にそんな人生ならもう自分で終了させてしまえばいいんじゃないかとも考えたが、今日び死ぬのにもお金が――しかも結果的に赤の他人に迷惑をかけるような死に方ではなおさら――かかるのだから、少なくともその金額を稼いでからにしようと結論付け、先延ばしにしている。それはつまり死ぬのに必要なお金を稼げるようになるまでは生きているということだとも言えるだろう。
 両親が『普通』――つまり至ってベーシックな人たちなので僕を大学生にして社会人にする気が満々で最近は成績についてよく質問してくる。成績はそこそこなので、そこそこの大学に進めるんじゃないかと僕は考えているが、親にしてみればできるだけいい大学に行き、できるだけいい企業に勤めてほしいらしい。そして両親にお金をまわしてガッポガッポのウッハウハとのストーリーをふたりは空想しているのが、これまでの会話に隠しきれないほど出てきてしまっている。しかし、もし僕にそうさせたいなら僕に自我が産まれてからでいいので契約書の1枚くらいは用意してもらわないと。こちらとしては捺印すらしていない約束を反故にするのかと将来言われるようになったとしても、どうしようもない。
 なんてことをふたりの前で堂々と言えればいいのだが、まだまだ親のすねをかじっている身としては下手に変な発言をして家を追い出されるわけにはいかず、こうして表面上はおとなしく親の言うことを聞いているふりをしながら、今日も今日とて学校まで歩いているわけだ。11月ともなればわりと寒いのは海が近いからなのだろうかなんてどうでもいいことを考えている内に目的地に、つまり今僕が通っている学校にたどりつく。
 年頃の男女に格差とか努力とか才能とかの教育をほどこすためにだけ建てられた殺風景な校舎をはじめて見た時は、こんなところには住みたくないだなんて随分と贅沢な感想を抱いた。ひとたび校内に入れば、そこで行われているのは基本的に将来をより良きものにするため、ひたすらの座学。この国は資本主義のはずだけど、実は社会主義ライクなお国柄だったりするのがチグハグぶりを表現していてとてもいい。それこそ『普通』が最高で最善、それ以外は家畜のエサにすら値しないとみんな考えているんじゃないだろうかとか、割と本気で思っている。
 生徒にしてみれば肝心の授業なんてどうでもいいので割愛する。最後の授業が終わり、ホームルームが行われた際ひらめいた。より正確に言うと最近このあたりで不審な事件が多数起きているという教師の言葉を聞いて頭のなかであることが思いついたのだ。どうしてこれまで思いつかなかったのだろうと自分を責めたいが、クラスメイトに注目されたくもないので、自分を戒める意味で机をバンバンと叩くのはなんとか我慢できた。
 ホームルームも終わり、あとは部活か帰宅かの2択となるやいなや、僕は教室を飛び出していた。それを恭しく簡単に説明すれば一縷の望みというやつだ。僕が死ぬ方法は何も自殺だけじゃない。他殺だって死んでしまえば結局のところ、結果は一緒なのだから。
 だから僕は不審な事件の詳細を誰もが使うであろう検索エンジンで検索してみたわけだ。すると本当にたくさんのニュースが検索結果として表示される。最新のニュースをクリックして読んでみると、家から少し離れているところで男性の変死体が見つかったとのことだ。ただ殺されただけなら非常に「よくある事件」のひとつとして取り扱われてもおかしくもないが、その男性がこれまでにも発見されている遺体のように磔にされている「猟奇殺人」となれば話は別だ。
 人を張り付けるのは難しいのはすぐにわかるだろう。なにせポスターなんかとは労力が全然違う。たとえば対象の重さが60kgだとしてもそれを支えられるだけのもので張り付けなくてはならない上、そもそも60kgのものを持ち上げることからして大変なのはすぐにわかる。それにもかかわらず、あえて磔にしているのはそこに何か――メッセージやら、何かしらの暗喩やら――がこめられているようにも感じられる。ふたりいればケンカができる人間が億の位もいれば、衝動的に刃物を振りかざしてしまう人がいてもおかしくはないだろうが、この惨事は明らかに人を殺すのが目的ではなく、人を殺して、その亡骸で何かしらのメッセージを放つために行われている凶行な気がしてならない。
 ちなみに貼り付けに使用されている杭が同じものであることから、一連の犯行は同一の凶悪なグループによる犯行であると推測されていて、捜査当局は連日連夜あわただしくしている、とのことだ。そこまで調べて、そう言えば最近パトカーをよく見るなぁとか今更気づいた。最近はテレビやラジオ、インターネットといった類にはてんで触れていなかったのが悪い意味で影響してしまっているのは間違いない。
 ニュースサイトだけではなく個人のブログやいわゆるまとめサイトにも取り上げられていて、様々な見知らぬ誰かの感想がひたすらに羅列されている。反応は様々だが、怖がるのと楽しんでいるかのような書き込みが割と多く見受けられたのが少し印象的だった。まあ、それがなんであれまとめる人間の思考がどうしても混ざってしまうのを避けられないので、そうであるかのように無意識で編集されてしまっているのかもしれないが、それを確認するすべはないしどうでもいい。
 それら以外にも、犯罪が発生しているマップの画像も入手した。見る限り法則性とか規則性なんてものは見つからなかったし、検証しているWikiページでも見つかっていないようだ。つまり、僕が犯人とこんにちはするのはまだまだ先になりそうだという結論になる。結論づけると同時に身を背もたれにあずけると見慣れた天井が視界に入ってくる。
 それではさびしいので何か耳寄りな情報はないかを探すと被害者一覧のページに行きあたった。老若男女を問わずに被害にあっている。これが例えば若年者だけ狙った犯行ならば僕にも可能性はあったのだが、犯人のストライクゾーンは広いことを再確認するだけにとどまった。犯行時間にもばらつきがあるので犯人は時間を自由に使える人物なのだろう。とはいえ杭を打つ際の音でバレてしまう可能性があるにもかかわらず白昼に堂々と殺害だなんておそらくはとてつもなく緊張しストレスがたまる行為ができるとは、なかなか肝が据わっているらしい。ほんの少しでいいから分けてほしいかもしれない。
 ま、とりあえず現状で僕ができるのは犯人の足跡を追跡することだろう。事件が発生した場所の地図があり、それらは近隣。そして犯人は現場に戻るとどこかで聞いた。だから、もしかしたらが起こるのを期待しつつ……も、今日はもう外に出かけるのが七面倒なので、明日の帰りにでも行くことにしようと心の中で小さくガッツポーズを掲げつつ、パソコンの電源を切るための動作に入っていた。人生もこれぐらい簡単に終了させることができればいいのに。


 翌日の放課後、自宅からいちばん近い犯行現場に足を運んでみた。ビルとビルとの間にできてしまったと言える袋小路で被害者は磔にされていた。しかし即座に通報されたわけではない。しばらくたってから異臭がするとの通報が警察に入り、通報者とかけつけた警察官が一緒にその異臭のする場所に足を踏み入れたらあまりにも凄惨な光景だったらしく、ふたりはそろって病院に搬送されてしまったとネットには書いてある。つまりはそういうことだ。何事にも解き明かしてはいけないタブーがあるのは誰もが知っているから、誰も様子について詳しく知りたがるような人なんていない。
で、犯行現場を見れば即座にわかるのは、犯人が磔にするための壁を求めているということだろう。ここに限らず事件はビルの壁や鉄格子といったまさに磔をするのにもってこいな場所で起こっている。つまり、この国の総人口を減らしている要因であろう犯人は犠牲者を磔にすることに異様に執着しているのがうかがえる。そのため今後も同じような場所で行われるのを想像するのは難しくない。
 警察の現場検証は終わって物証があらかた運びだされているとはいえ、何かしらのヒントみたいなものを肌で感じられないかと来てみたわけだが、あんまり意味がなかったかもしれない。僕は別に探偵でもないし警察官を目指しているわけでもない。その上推理やらミステリーってジャンルを網羅しているわけでもない。それだったらモンロー・ノイマン効果を有効に活用し、戦車や装甲車に向けてブッ放つアレの方がよっぽどよく知っている。紛争地域などではもはやデファクトスタンダードと化している、突撃銃やテクニカルじゃないほうのアレのことだ。
 とりあえず写真でも撮るかと昔投げ売りされていた時に購入した型落ちのデジタルカメラを取り出し、適当に撮影しておく。
 カメラのシャッター音以外が響かないため、僕だけこの世界に取り残されてしまったかもしれないなんて荒唐無稽な考えが頭に浮かぶが、即座にデリートする。この世界はそれほどSFとかファンタジーに満ちてはない。
 と考えつつも、唐突に足音が聞こえた時は心臓が口から飛び出すかと思ってしまった。こんな場所に用がある人間なんておまわりさんくらいしか思いつかない。だからといって逃げ出してみれば、まるで僕が犯人ですよと伝えているようなものだ。僕にはどうすることもできなかった。まさに袋のネズミそのものである。
 足音が止まる。背後からは戸惑っているような空気が僕に向かって流れている――そんな気がした。
「ふむ」
 女性の声が響いた。
「君も、敵討ちかね?」

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